研究概要 |
我々は色素細胞の分化・増殖機構を明らかにするためにその前駆細胞(色素芽細胞)の胎児での同定を行い、免疫組織染色によりc-Kit受容体型チロシンキナーゼのほかチロシナーゼ関連分子TRP2およびα4-integrinが新たな色素芽細胞マーカーとして使えることが判明した。次に胎児の皮膚をdisperse処理することにより細胞表面のタンパクを失うことなくsingle cellに解離させうることがわかり、その中から色素芽細胞の検出を試みた。c-Kit及び皮膚に混在すると思われる血液細胞に特異的な分子CD45により細胞を染色後folw cytometryで解析しc-Kit+CD45-細胞を12.5日胎児から選別するとすべての細胞は色素細胞マーカーTRP2陽性でありこの細胞集団は色素芽細胞であると結論した。分離されたc-kit+CD45-色素芽細胞のin vitroでの増殖要求性をdefined mediumと様々な増殖・分化因子を用いて調べたところSteel因子(c-Kitのリガンド)にbFGF,LIFを加えたときに細胞はTRP2の発現を維持しながらある程度増殖した。これは、同じくc-Kitを機能的に必要とする始原生殖細胞と共通の増殖様式である。今回の研究でこれまで神経管を培養することでしか得られなかった色素芽細胞を12.5日胚から分離することができた。この細胞を用いて前述し増殖要求性をさらに詳しく調べることに加え様々な細胞外マトリクス成分に対する反応、胎児への移植による分化能力・環境との相互作用、神経堤細胞から色素細胞への決定し関与する遺伝子を調べたい。
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