エコトーンの典型例として人為的起源により硝酸態窒素の汚染を受けている地下水が自然に湧出している水田地域を対象にして、現場調査と現場試料を用いたバッチ実験によって温室効果ガスである亜酸化窒素の生成と分解を調べた。この地域では至るところで湧水が見られており、それは生活排水の汚染を受けている小河川F川に流入する。湧水、F川の水とも硝酸態窒素が20mg/l程度で、飲料水の水質基準を大きく上回る硝酸態窒素が含まれていた。TOCは湧水よりも河川水の方で高く、河川が汚濁していることを示している。亜酸化窒素は場所による違いがあるが、自然大気との平衡濃度に比較して100倍程度高くなっている。注目されるのは河川水の方がかなり高い亜酸化窒素濃度を示している点であり、このことは河川水中で脱窒反応に伴って亜酸化窒素は生成していることを示唆している。また、単に水が湧き流れている場所でなく、ヨシの根元で湧水が起きているような場所では亜酸化窒素濃度がかなり低くなっている。次に、現場の土壌を採取し、現場の水と有機物源としてグルコースを混合したバッチ実験を行った。土壌を含む場合は、有機物を添加しなくてもある程度の脱窒反応が起きた。そしてその途中で80μg/lの亜酸化窒素が発生してしまうこと、また有機物不足の場合には残存した亜酸化窒素がなかなか消失しないことが観察された。次に、河川水を用いて25℃でバッチを行った。河川水に何も添加せず無酸素状態に保った場合、脱窒はあまり進行しないが、800μg/lにも及ぶ亜酸化窒素の発生が見られた。このことは、この河川で脱窒に伴って亜酸化窒素が発生していることを強く示唆している。
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