本研究は、天然界面活性物質であるフミン物質の界面活性、疎水性物質との強い相互作用を利用して環境汚染物質特に炭化水素類を除去する技術を開発することを目的とする。本年度は多種類のフミン物質についてその界面活性を測定し、活性の高いフミン物質について液体炭化水素化合物との相互作用を調べることを計画した。研究方法及び成果は次の通りである。 1.フミン物質の界面活性:海底堆積物、リグナイトより0.1MNaOHによってフミン酸を抽出し、沈殿と溶解を繰り返して精製した。市販のフミン酸も同様に精製した。フミン酸濃度を変化させて表面張力を測定し、表面張力低下能の目安とした。 2.フミン物質と疎水性物質との相互作用:液体炭化水素としてケロシンを用いフミン酸水溶液への可溶化実験を行った。可溶化の方法について種々検討し、容器、ケロシンの分散方法、フミン酸溶液とケロシンとの量比、ケロシンの定量法などを決定した。可溶化したケロシンはTOCにより定量した。フミン酸水溶液へのケロシンの可溶化量は分散後1時間静置で約100ppmであった。3日静置するとほぼ定常値となり、市販のAldrichフミン酸ではフミン酸濃度の高い方が可溶化量は大きくなる傾向を示したが、海洋性フミン酸のBS-12では逆の傾向であった。これは固体炭化水素の場合とまったく異なっており、可溶化の方法などについて再検討が必要と思われる。 3.今後の方針:液体疎水性物質のフミン酸溶液への溶解には可溶化状態と乳化状態とが混在しているため、測定に際して曖昧さが付きまとう。今後は乳化状態の見積もりを明確にする測定法を工夫するとともに、可溶化に影響を及ぼす因子(温度、塩濃度、pH等)について検討する予定である。
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