研究概要 |
本研究ではT.thioparusのチオシアン分解に伴うCOSの気相への発生と再取り込みが、培養条件によってどのように影響を受けるかを調べた。1)基質濃度:初発チオシアン濃度が10及び20mMではチオシアンはすべて分解され、気相には約30μmolのCOSが検出された。50mMではチオシアンが30mMまで分解された時点で停止し、気相中には最大で800μmolものCOSが検出された。これは分解されたチオシアンの約半分がCOSとなって放出されたことを示す。2)リン酸塩の濃度:リン酸塩が通常の培養条件の10倍濃度ではチオシアンは完全に分解されたが、1/10濃度では分解が抑えられそれに伴いCOSの発生量が増加した。3)培地のpH:チオシアン分解の至適pHである7.0、及びpH6.0ではCOS発生は低いレベルに迎えられていた。一方、pH8.0とした場合はpH6.0よりも分解はさらに遅くなりCOS発生量も最大で90μmolが検出され、アルカリ側にシフトすることによりCOS発生は増すことが明らかとなった。 基質が速やかに分解される条件では、分解されたチオシアンに対して気相に放出されるCOSは1%以下であるのに対し、分解が遅れるような条件ではCOS発生は10〜20%、特に分解が途中で停止した場合は分解された基質のうち約50%もの部分がCOSとなって気相へ出された。COS発生の増大の理由としては、細菌によるCOS代謝がこれらの条件下で抑制される、あるいは細胞外壁等の性状変化に伴いCOSが細胞外へリリースされやすくなる等が考えられる。 Thiobacillusは気相のCOS濃度が30,000ppm以上となってもCOSを代謝することができ、これはウサギの致死濃度の約10倍に相当し、COSに対する耐性はきわめて高いといえる。COSは生物起源のイオウ系悪臭ガスの中に含まれるとも云われ、将来はこのような系での処理の利用も可能と考えられる。
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