研究概要 |
1.パーキンソン氏病(PD)発現に関与すると考えられるβ-carbolinium cationを、22例のPD患者脳脊髄液から測定し、PDを伴わない16例のコントロール患者のそれと比較した。β-carbolinium cationの中で、最もドパミン神経毒性の強い2,9-demethyl-β-carbolinium cation(2,9-Me2BC^+)がPD患者12例から検出されたが、コントロール患者脳脊髄液中には1例のみしか認めることができなかった。2-Monomethyl-β-carbolinium cation(2-MeBC^+)はほぼ全例から検出され、PD群においてはYahr stageとの間に正の強い相関が認められた。ところが、2,9-Me2BC^+とstageとの関連は弱い負の相関が観察された。β-carbolinium cationの前駆体となるβ-carboline濃度においては、両群間での差は認められなかった。上記のことは、β-carboline→2-MeBC^+→2,9-Me2BC^+の活性経路を経たβ-carbolimium cationがPD発症過程に強く関与することを示唆するものと考えられた。 2.低濃度における2,9-Me2BC^+のドパミン神経への毒性を、MPP^+のそれと、brain microdialysis法を用いて比較した。両者は、極めて低濃度からドパミン神経終末からドパミンを放出させ、終末に取り込まれてモノアミン水酸化酵素を抑制した。その両者の作用は、低濃度においてはドパミン神経に特異的であったが、高濃度では特異性が失われた。また、芳香族脱炭素酵素阻害剤を用いて、インビボにおけるチロシン水酸化酵素への影響を観察したところ、MPP^+は極めて低濃度から不可逆的にその酵素活性を抑制した。一方、2,9-Me2BC^+は高濃度においてのみ強い酵素抑制作用を示した。このことは、2,9-Me2BC^+がより強くモノアン水酸化酵素に作用するためと考えられた。2,9-Me2BC^+は、低濃度からドパミン神経に取り込まれてドパミンの合成・代謝を阻害することを明らかにした。
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