運動ニューロンにおける細胞死をBDNFやNT-3がある程度阻止することから、BDNFやNT-3が運動ニューロン栄養因子として働いていると考えられるが、他の栄養因子が存在する可能性もある。我々は、運動ニューロンを特異的に認識する抗体を用いて運動ニューロンを精製し、RT-PCR法により運動ニューロンに特異的に発現するレセプター型チロシンキナーゼ群をクローニングした。その中で、BDNF、NT-3のレセプターであるTrkファミリーとは異なるEphレセプター型チロシンキナーゼファミリーに含まれるSekが、肢を支配する運動ニューロンと肢芽に特異的に、さらに運動ニューロン細胞死の時期(E5〜E10)に一致して一過性に発現していることを見い出した。平成6年度はレセプター型チロシンキナーゼSekの細胞外領域とヒト抗体のFc部分を結合したcDNAを作製し、COS細胞にこの融合蛋白を発現させ、その培養上清からプロテインAカラムによって数mgの融合蛋白を精製した。この融合蛋白でマウスを免疫し、約200クローンのモノクローナル抗体を確立し、その中で6クローンは免疫組織化学と免疫沈降に使用可能であった。これらのモノクローナル抗体の中にはリガンド結合を阻害する抗体が必ず存在すると期待され、機能阻害抗体は、Sekの機能解明に有用と考えられる。Sekに対する抗血清がセリガンドとして働き、細胞株に発現させたSekがリン酸化することから、このリン酸化を阻害する機能阻害モノクローナル抗体を検索中である。また、マウスのSekのリガンド(ELF-1)が報告されたため我々が解析しているトリのELF-1をクローニングした。
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