逆行性神経軸索変性モデルマウスであるgracile axonal dystrophy(GAD)マウスを用い神経軸索の機能維持に必須の分子の単離を目的に研究を行なった。GADマウスは劣性遺伝形式を取りその責任遺伝子は第5番染色体上に存在することがこれまでの研究から知られている。しかしその遺伝子の本体については全く不明である。そこで私はポジショナルクローニング法で目的のgad遺伝子の単離に迫り軸索機能維持因子の実体を明らかにすることにした。本目的遂行のため今年度はバッククロスパネルの作成、マイクロサテライトDNAマーカーを用いた連鎖解析に基づくgad遺伝子座のファインマッピングを行なった。 GADマウスとC57BL/6Jマウスを交配し、得られたF1をさらにGADマウスと交配する「戻し交配法」により462匹のprogeny(N2)を得た。市販のマイクロサテライトDNAマーカーの中から、GADマウスとC57BL/6Jマウスの間で多様性があり、かつgad遺伝子座近傍に存在すると考えられた8個を選別し、PCR法により得られてすべてのprogenyにおいて各マーカーの解析を行なった。その結果、マーカーならびにgad遺伝子はセントロメア側からD5Mit81〜D5Mit233〜D5Mit184/D5Mit254〜D5Mit256〜D5Mit197〜gad〜D5Mit113〜D5Mit7の順に並び、gad遺伝子はD5Mit197から0.4±0.3cM、D5Mit113から5.0±1.0cMの距離にあることが判明した。今後はgad遺伝子座に最も近いD5Mit197を用いて酵母人工染色体ライブラリーをスクリーニングし、得られたクローンの解析からgad遺伝子の同定を目指す予定である。
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