1。マウスCk15遺伝子の構造決定。食道上皮で特異的に発現するケラチンであるCk15遺伝子をクローニングし、塩基配列を決定した。この遺伝子は単層上皮特異的ケラチンであるCk19遺伝子の下流約4kbに存在し、構造も比較的似ていた。これらの結果は、この二つの遺伝子が比較的最近、増幅したことを示唆する。ただし、Ck15は8個のエクソンからなるが、Ck19はカルボキシル末端側の蛋白質をコードする2個のエクソンが欠けており、6個のエクソンしか持たない。他のタイプIケラチン遺伝子のほとんどは8個のエクソンからなることから、これら二個の遺伝子が増幅した後、Ck19遺伝子の二個のエクソンが欠失した可能性が考えられる。 2。種を越えたケラチン遺伝子の保存。動物の体を構成する上皮組織のなかで、最も原始的な形態を示すのが単層上皮である。従って、単層上皮特異的発現をするケラチンが保存されていると考えられる。そこでマウス単層上皮特異的ケラチンであるCk8を用いて、ゲノミックサザンハイブリダイゼイションによって、各、動物種のゲノム上に存在するケラチン遺伝子の検索を行った。その結果、塩基配列の類似した遺伝子は両生類までは遡ることができた。おそらく、脊椎動物全体ではかなり構造が保存されているものと予想している。 3。ゼブラフィッシュのケラチン遺伝子のクローニング。マウス単層上皮特異的ケラチンである、Ck8をもとに硬骨魚類であるゼブラフィッシュのケラチン遺伝子をクローニングした。現在、その塩基配列の決定を行っている。
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