(1)超好熱菌のゲノム解析 超好熱菌PyrococcusKOD1株の染色体DNAを、8-12塩基認識酵素で切断し、ゲノムサイズをパルスフィールド電気泳動法で測定し、また詳細な物理地図も作成した。ゲノムサイズは、2040kbp程度であり、大腸菌(4700kbp)半分以下であった。コードされているタンパク質の種類に大きな差がないとすれば、KOD1株の染色体DNAは、非常に濃縮された形で情報が集約していると考えられた。また、DNAポリメラーゼ、TATAbox結合タンパク質、シャペロニンタンパク質、tRNAシンセターゼなど、セントラルドグマ関連遺伝子が一部分に集中しているのも特徴として挙げられた。 (2)DNAポリメラーゼに関する研究 イントロンを含むKOD1 DNAポリメラーゼ遺伝子全体を大腸菌に移入し、プロセシングが正常に起こるか否かを調べた。その結果、介在配列のスプライシングは、大腸菌においても正常に起こったことから、スプライシングに関する機構は、遺伝子自体に本来備わっていると考えられた。また、スプライシングは、RNAレベルと言うよりむしろタンパク質レベルで起こっていると考えられた。介在配列にコードされている、タンパク質は、15塩基程度を認識する特殊なエンドヌクレアーゼであり、DNA再編成にも関与している制御タンパク質であることが明らかとなった。 (3)アスパラチルtRNAシンセターゼに関する研究 KOD1株由来の、アスパラチルtRNAシンセターゼ遺伝子を解析した結果、真核生物由来のものとも比較的高い相同性を保持していることが解った。原核生物由来のものと相同性が高い領域と、真核生物由来のものと相同性が高い領域が、モザイク状をしており、原子生命体に近い超好熱菌の遺伝子構造を、原核生物と真核生物が分け合っている形で、進化が起こったことが解る。
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