(1)脊椎動物アルドラーゼにはA型(筋型)、B型(肝型)、C型8脳型)の3種類のアイソザイムがあり、組織の機能に適した基質特異性を持つ。また、各アイソザイムは分子構造の中にアイソザイム固有の4つの特徴的な配列(IGS-1-4)を持つことから、これらの配列が組織特異性を決める領域として機能していることが予測される。これを実証するため、ヒトアルドラーゼA型、B型、C型の間でIGS領域を入れ替えたキメラ分子を作成し、IGSの変換によって酵素機能が変化するかどうかを調べた。その結果、組織特異的機能を示すために各アイソザイムの4つのIGSの内アミノ末端側の35番目から47番目までの13個のアミノ酸で構成されるIGS-1と311番目からカルボキシ末端363番目までの52個のアミノ酸からなるIGS-4が不可欠であることが確かめられた。 (2)脊椎動物アルドラーゼの3種類のアイソザイムに見い出されたIGS領域は各アイソザイムの酵素機能に重要な役割を果たすばかりでなく、原始脊椎動物のアルドラーゼにもIGSに対応する領域が存在し酵素の分子進化に何らかの役割を担っていることが期待されるため、円口類の一つヤツメウナギの遺伝子ならびに酵素の解析を行った。この生物には2種類のアイソザイムが存在し、酵素学的性質が著しく異なることが確かめられた。さらにcDNAから明らかにされた酵素のアミノ酸配列からIGS-4に対応する領域が互いに異なっていることが確かめられた。これらの実験結果からヤツメウナギでは、IGS-4が酵素機能の決定に重要な役割を果たしていることが間接的に証明された。
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