心筋細胞分化の制御とその異常

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06274102
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 矢崎 義雄 東京大学, 医学部(病), 教授 (20101090)
• 研究分担者: 松尾 寿之 国循センター研究所, 所長 (50028685) ; 中尾 一和 京都大学, 医学部(病), 教授 (00172263) ; 篠山 重威 京都大学, 医学部(病), 教授 (70109007) ; 古賀 義則 久留米大学, 医学部(病), 助教授 (50080669) ; 多田 道彦 大阪大学, 医学部(病), 教授 (90093434)
• キーワード: ホメオボックス / エンドセリン / gp130 / カルシウム遊離チャンネル / 心不全 / 心肥大 / ANP / BNP

研究概要

心筋の収縮性を規定している細胞内カルシウムの調節の中心的役割を演じている心筋小胞体カルシウム遊離チャンネルのプロモーター解析を行い、GCボックス及びその上流配列が必要であることを明らかにした。
心房と心室に由来する心臓ホルモンであるANP、BNPの発現調節を解析した。エンドセリン-1刺激により、ANPmRNAは数時間後より徐々に発現を増強させるのに対し、BNPmRNAは15分より発現が増強した。これはCキナーゼの阻害薬で抑制されたが、Cycloheximideの影響は受けず、ANP、BNPが明らかに異なる遺伝子発現調節を受けていることが証明された。
IL-6とIL-6受容体の両方を過剰発現しているトランスジェニックマウスを作成したところ著明な心筋細胞肥大をきたし、IL-6等の受容体にリンクし細胞内情報伝達系に関与していることが判明しているgp130の活性が亢進していた。
ダール食塩感受性サットにより、心不全モデルを作成し、心肥大から心不全に至るメカニズムの解明に取り組み、心筋発生張力の減少は細胞内カルシウムイオンの変化に伴うものであることを明らかにした。
心筋細胞に特異的に発現し、その初期発生に重要な役割を演じているホメオボックス遺伝子Csxをヒト心筋から単離し(CSX)、それがヒト染色体5q34に存在することを明らかにした。非心筋細胞を心筋細胞へ変換させ移植することによる新しい治療法の開発に繋がりうる結果である。また、ハムスターBNPのcDNAクローニングにも成功し、心筋症ハムスターのANP、BNP発現がヒトの心不全病態と一致することをみいだした。ヒト心不全の病態解明に有用なモデルが確立したと考える。さらに、エンドセリン-1欠損マウスを解析し、鰓弓の形態形成異常のみでなく、大動脈弓、心室中隔の形成にエンドセリン-1が重要であることも判明した。

研究成果

• [文献書誌] M.Kojima,Y.Yazaki et.al.: "Angiotensin II receptor antageniot TCV-116 induces regression of hypertensive left vertiuidar hypertrophy in vivo and inhibits the intracellular signaling pathway of strechmediated cardiomyocyte hypertrophy in vitro" Circulation. 89(5). 2204-2211 (1994)
• [文献書誌] Y.Kihara,S.Sasayama et.al.: "Sodium/calcium excharge moduiates intraceliur,calcium overload during pasthypoxic reoxaehation in manmaiirn worpiny myocardium" Journal of Clinical Invention. 93. 1275-1284 (1994)
• [文献書誌] Otsu K.Tada-M et.al.: "The point mutation Arg615--7Cys in the Ca^<2+> release channel of skeletal sarooplasmic reticulum is responsible for hypersensitivity to caffeine and halothane in malignant hyperthermia" J-Biol-chem.269(13). 9413-9415 (1994)
• [文献書誌] Sugo S.,Matsuo H.et.al.: "Production and secretion of adrenomedullin from vasoular smooth muscle cells augmented production by tumor necrosis factor alpha" Biochem-Biophys-Res-Commum. 203(1). 719-726 (1994)
• [文献書誌] Ogawa Y.,Nakao K.et.al: "Molecular cloning of the complementary DNA and gene that encode.mouse brair natriuretic peptide and generation of transgenic mice that overexpress the brain natriuretic peptide gene." J-Clin-Invent.93(5). 1911-1921 (1994)
• [文献書誌] Koga Y.et al.: "Therapeutic management of dilated cardiomyopathy" Cardiovasc-Drugs-Ther. 8(1). 83-88 (1994)
• [文献書誌] I.Shiojima et.al.: "Diastolic Relaxation of the Heart" Kluwer Academic Publishers Boston, 348 (1994)