研究概要 |
ヌクレオシド二リン酸キナーゼNucleoside Diphosphate Kinase(NDPキナーゼ)は、分子量18000でGDP→GTPとGTPを産生し生体維持に重要なリン酸化酵素である。私共は細胞膜NDPキナーゼが、GTP結合蛋白(G蛋白)のGTP→GDP水解反応に対し、常時GTPを供給する重要な役割を果たすことを明らかにした(JBC1983,1990)。1年目において、私共は、(1)NDPキナーゼの2つのアイソタイプのα、βのクローニングを行い、βはαの82%のhomologyを示した。また、(2)NDPキナーゼはmRNAは、αが大脳、胸腺、脾臓、肝、小腸、大腸にくらべ心筋と骨格筋、腎で10〜20倍の強い発現をみとめた。また、NDPキナーゼβは大脳に最も高い発現をみとめた。また(3)α、βのモノクローナ抗体を作成し、心筋細胞及び骨格筋細胞での局在を検討したところαは細胞膜及び細胞質、βは細胞膜にみとめた。これらのことは心筋、骨格筋、腎、脳はエネルギーの消費の最も大きい臓器群であり、また、膜のイオンチャンネルをはじめとするイオントランスポートの豊富なため、NDPキナーゼα、βがこれらのエネルギー産生系とイオントランスポートに重要な役割を果たしていることを示す。NDPキナーゼは単量体ではなく、α、βの6量体でありα、βの発現の変化は心筋細胞膜及び細胞質のNDPキナーゼ機能に大きな影響を与えると考えられる。 以上のように、心筋に最も豊富に存在するNDPキナーゼは心筋の受容体-G蛋白、チャンネル、収縮機能及びエネルギー産生に関与することを示し、NDPキナーゼ心筋発現と機能の解明は心筋分化異常と病態形成の分子レベルでの機構の解明に重要な新しいアプローチを示す。
|