研究課題/領域番号 |
06275202
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡部 終五 東京大学, 農学部, 助教授 (40111489)
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研究分担者 |
伏谷 伸宏 東京大学, 農学部, 教授 (70012010)
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キーワード | 細胞質分裂 / 海綿 / 生理活性物質 / アクチン / 線維芽細胞 / カリキュリンA / ミカロライドB / ヒスセオネライドA |
研究概要 |
海綿など海産無脊椎動物は、種々の生理活性物質を豊富に含んでおり、これらは生命科学的な研究を行う上でも格好の試薬として注目されている。本研究は、海綿から得られたウニ卵割の阻害物質を対象に、細胞骨格の主要成分であるアクチンとの相互作用を調べ、細胞質分裂との関連性を検討する目的で行われた。 まず、ウニの卵割阻害や細胞毒性を指標に、種々のクロマトグラフイ-を駆使して、いくつかの生理活性物質を海綿の抽出物から単離した。次いで、これら物質を、マウスやラットの線維芽細胞に加えて、10%FCSを含むMEM培地中、5%CO_2下でインキュベートし、細胞の形態変化や細胞質分裂の様相を調べた。さらに、細胞のF-アクチンからなるストレス・ファイバー、および核を染色し、活性物質の影響をみた。 その結果、フォスファターゼ阻害剤であるカリキュリンAは、細胞の形態を著しく変化させた。さらに、細胞をシャーレから剥離させ、細胞表面にblebを生じさせたが、ストレス・ファイバーに及ぼす影響については、とくに顕著な傾向はみられなかった。一方、ミカロライドB(MY-B)やビスセオネライドA(BT-A)も細胞の形態を変化させ、ストレス・ファイバーを消失させたが、細胞はシャーレから剥離しなかった。なお、この場合、細胞質分裂が阻害されているにもかかわらず、核分裂は進行した。 そこで、MY-BやBT-Aにつき、G-アクチンからF-アクチンへの重合能に及ぼす影響を調べたところ、いずれも強力に阻害することが示された。また、MY-Bにおいては、F-アクチンをG-アクチンに脱重合する作用も認められた。したがって、これら試薬は、細胞性アクチンに作用することにより、培養線維芽細胞の細胞質分裂を阻害することが示唆された。
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