出芽酵母において細胞分裂の起きる位置は、出芽部位に相当し、細胞型により規定されている。出芽部位には、細胞極性に従い種々の因子が局在し、細胞質分裂に必要なネックフィラメントなどの因子も出芽開始時に既に局在している。細胞極性の確立維持に関与する遺伝子や細胞質分裂に必要な遺伝子の変異は、出芽位置を異常にし、芽の形成のための細胞極性確立維持機構と細胞質分裂装置の局在機構とは、密接に関連していると考えられる。低分子量Gタンパク質Cdc42pやRho3pが欠失すると細胞極性の確立維持不能となる。細胞極性による細胞質分裂装置の局在機構を解析するために遺伝子学的手法を用いてCDC42、RHO3 関連遺伝子の解析を行った。 多コピーでrho3欠損を相補する遺伝子SRO1-SRO9の解析を行った。SRO1は、SH3をもつタンパク質をコードとし、細胞極性確立に関与するBEM1と同一である。Bem1pのSH3と結合するBOIタンパク質を同定できた。BOI機能の欠損は、Rho3p活性の上昇により抑圧された。これらの関係は、Bem1pとBOIタンパク質がRho3pとともに働き細胞極性維持に働いていることを示している。SRO2は、CDC42と同一であり、cdc42温度感受性変異株を用いてCDC42と遺伝学的に密接に結び付く細胞極性確立に関与する新しい遺伝子BEM4を同定した。SRO4 遺伝子破壊株は、出芽パターン異常を示し、出芽部位決定にSro4pの関与が明らかとなった。これらの遺伝子群の解析により、多数の因子の関与が予想される細胞質分裂装置の局在機構を明らかにしたいと考えている。 M期終了に関与する低分子量Gタンパク質遺伝子TEM1を同定した。TEM1機能を欠失すると細胞は、テロフェーズにて細胞周期を止める。TEM1経路を遺伝学的に解析することで細胞質分裂の開始時を決める機構を解析できると考えている。
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