研究概要 |
哺乳類細胞の細胞質分裂の制御機構には細胞骨格系を制御する遺伝子を始め様々な遺伝子の関与が予想される。G2期から細胞分裂期(M期)への移行時でのcdc2キナーゼに関する研究からも明らかなように、cdc変異株の使用がこのような遺伝子の特定には強力な手段となり得る。我々は細胞質分裂が高温でおこらないマウス温度感受性変異細胞を単離しその性質を研究した。その結果この細胞,tsFT101細胞は33度ではほぼ野生株と同様に増殖するが39度では核分裂はおこるが細胞質分裂がおこらず、多核細胞となり最大八核までの細胞が観察された。この一核内DNA含量は2Cであり核内でのDNA量の増加、減少は観察されなかった。このことからこのtsFT101細胞は細胞質分裂に必須な遺伝子が変異をおこしている可能性が強く示唆された。しかしこのことがこの細胞が細胞質分裂が高温でいかない直接的原因かどうかはこの細胞の変異遺伝子を同定することが必要である。我々はこれまでにヒトゲノムDNAを薬剤耐性プラスミドとともに変異細胞に移入し薬剤耐性で、高温耐性であるクローンを得、そこから変異を相補できる遺伝子の単離をしてきている。現在この方法をこのtsFT101に適用しこの変異を相補できる遺伝子の単離を試みている。
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