1.ミオシンの蛍光標識法の検討。細胞性粘菌よりミオシンを単離し、蛍光標識した。蛍光色素としては、5-iodoacetoamido fluoresceinほかいくつかで試みた。この蛍光標識ミオシンのATPase活性、繊維形成能などを標識していないミオシンと比較し、蛍光標識によりあまり活性の変化のない標識条件を調べた。 2.蛍光標識ミオシンの細胞内導入法の検討。まず、エレクトロポレーション法により、蛍光標識した高分子を細胞内に導入する条件を検討した。その結果、外液の濃度、電圧の調節により、高分子を希望の量だけ導入する条件がえられた。ミオシンの導入も可能となったが、現段階では、いくつかの問題点が残っている。そのひとつは、ミオシンは高イオン強度条件でのみ、単量体になるが、この条件では、導入後、細胞が破裂しやすいことである。これらの問題も、現在解決しつつある。 3.蛍光標識ミオシンの導入量の検討。細胞内に導入するミオシンの量を変えて、細胞の運動活性、分裂能をビデオにモニターし、行動解析プログラムを用い、細胞に影響を与えない導入量を算出することを試みた。現段階で導入できている量の蛍光標識ミオシンによって、細胞の運動性は変化していない。 4.細胞内に導入された蛍光標識ミオシンの挙動の解析。導入された蛍光標識ミオシンを、超高感度カメラでモニターし、その細胞内での挙動を解析した。細胞分裂時に、導入された蛍光標識ミオシンは収縮環に集まってくることがわかった。また、細胞の運動時には、細胞尾部への蛍光標識ミオシンの局在化が観察された。細胞の運動に伴って、ミオシンのすみやかな分布変化がみられた。このような観察は、運動性の細胞で初めて得られたものである。
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