研究概要 |
転写因子をモジュールに分解し、シグナル認識に関与しているモジュールを明らかにし、さらにそのモジュールの立体構造によって機能部位を推定することを目的に本研究を行った。 (1)転写因子TAF_<II>250のモジュール境界の予測:TAF_<II>250は基本転写因子TFIIDの構成成分である。九州大学の西本らにより単離されたヒトCCG1遺伝子は細胞周期G1期進行の調節機構に関与しているが、TAF_<II>250の遺伝子と同一であることがわかっている。ヒトCCGは1,872アミノ酸残基からなる大きいタンパク質である。その機能部位を調べるために、郷らが開発した方法により、モジュール構成の予測を行った。152個のモジュールからなることが予測された。 (2)ヒトCCG1遺伝子のエキソンとCCG1のモジュール境界との対応相関:西本らによりヒトCCG1遺伝子の構造が決定され、38個のエキソンに分かれていることが明らかになった。イントロンは予測されたモジュール境界とよい相関を持つこと、モジュールは機能部位ともよく対応していることがわかった。モジュール情報をもとに、さらに詳細に機能部位を調べるための道が開けた。 (3)Camリプレッサー(CamR)とシトクロムP-450cam(P-450cam)とに存在する共通モジュール:P-450camは立体構造が判明しており、モジュール同定ができる。基質(カンファー)を結合するモジュールがCamRにも存在することが、アミノ酸配列の類似度から推定された。CamRはカンファーをシグナルとして、カムオペロンの転写調節を行う。CamRとP-450camはカンファーという共通のシグナルを認識するモジュールを共通に取り込んだ結果、現在の機能を獲得したに違いない。
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