研究概要 |
本研究の目的は燐酸化による転写調節因子の活性化過程をイメージングすることである。これまで遺伝子と転写調節因子との結合はゲルシフトなどで予測していたため、結合過程でいかなる形態変化が起こるかは不明であった。そこで、転写調節因子CREBについてはソマトスタチンまたはチロシン水酸化酵素の遺伝子5'側のプロモーター領域を含む約1000塩基を切り出し、結合させたあと、溶液吸着や噴霧法によりマイカ面上に展開し、低角度回転蒸着法や原子間力顕微鏡により観察した。この方法により現在はDNAラセン構造の1/2ピッチ(10塩基対)を一つの単位として再現良く観察可能になった。CREBなどの転写因子は結合するとDNAは極僅か曲げることが明かとなった。また、CREBとDNAの結合は燐酸化により大きな影響を受けなかった。CREBは二量体であるが、球形で中心に溝をもつことがわかった。溝は二量体をつなぐ橋により形成されるのであるが注意深く観察するとさらにその橋の部分から小さな突起が溝に向かって飛び出しているのが、明かとなった。そして、結合に際し、その突起がDNAの二重鎖の水素結合部位に圧するように結合するのではないかと推測できるような画像も得られた。一方、同じ班員である名大分子生物の饗場とは大腸菌の転写調節因子であるCRPとDNAの結合様式についての研究、また阪大微研の岩崎らとはHoliday Junctionへの結合因子RuvA,B,Cの結合様式についての研究も始められた。特に饗場らとの共同研究でCRPの結合により僅かに屈曲したDNAがさらにポリメラーゼの結合により大きく折り曲げられるようすも明かになった。
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