インターフェロン(IFN)系を制御する転写制御因子IRF(interferon regulatory factor)-1の癌化における関与を明らかにする目的で、IRF-1欠損マウスより調製した胎児線維芽細胞(EF)に活性型c-Ha-ras遺伝子を導入し解析を行った。その結果、野生型EFでは見られないが、IRF-1欠損EFはras遺伝子単独でトランスフォームすることを見い出した。この現象は癌抑制遺伝子p53欠損EFでも同様に見られ、IRF-1が癌抑制遺伝子として機能する事を実験的に証明した。即ち、癌抑制遺伝子欠損と癌遺伝子活性化の協調作用により細胞がトランスフォームすることを見い出し、IRF-1欠損がそれに相当することを証明した。更にIRF-1欠損EFでは活性型c-Ha-ras遺伝子によって誘導されるアポトーシスが見られない事を見いだし、IRF-1が癌遺伝子活性化の際に癌化へと向かうか、細胞死へ向かうかを決定する重要な因子の一つである事を示した。 一方、ヒトIRF-1遺伝子が白血病・MDS(myelodysplastic syndrome)で頻繁に欠損(いわゆる5q欠損)のみられる染色体5q31.1にマップされ、5q欠損のみられる白血病・MDS患者13例に一致してIRF-1遺伝子の欠損・不活性化を既に検出していたが、本年度は5q欠損の見られない多くのMDS症例でexon skippingにより機能的IRF-1の産生が減少していることを見い出した。これらの事からIRF-1が白血病・MDS発症に関与している事が強く示唆された。
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