研究概要 |
癌遺伝子mafはトリ肉腫ウイルスより1989年、西沢らによって見いだされた癌遺伝子で転写調節因子をコードしている。本研究の目的はラットmaf関連遺伝子をクローンし、標的遺伝子の1つと考えられるGST-P遺伝子の転写活性化にどのように関与しているのかについて調べること、ラットmaf関連遺伝子の組織分布を調べ標的遺伝子を探索することであり、本年度は以下の成果が得られた。1.ラット肝臓cDNAライブラリーより2種類のmaf関連遺伝子のcDNAクローン(Rat maf-1、maf-2)を得た。v-mafとの相同性はそれぞれ56%、81%でmaf-1とmaf-2の相同性は約50%であったが、c-端に位置するbZip構造はお互いに約80%の相同性を持っていた。maf-1はすでにトリで報告されているmafBと約80%の相同性があることから、maf-1、maf-2はそれぞれmafB、c-mafのラットホモログと考えられる。2.これらの遺伝子産物のDNA結合特異性を調べた結果、TREおよびCRE様配列に強く結合し、Maf結合配列を持つGST-P遺伝子を強く転写活性化する。しかし、c-Maf,およびMafBとはやや異なった結合特異性を持っていることが明らかとなった。これらのMaf関連遺伝子産物はお互いにヘテロ二量体を形成し、Maf-1はJunとも二量体を形成した。3.これらの遺伝子産物の発現の組織分布をRNaseプロテクション法、で調べた結果両方とも脾、腎、肝、筋、小腸に弱い発現を認めた。特異抗体を用いた免疫組織化学的な方法で調べると両方の遺伝子産物がラット骨端軟骨細胞の成熟軟骨細胞、20日胎児の椎体軟骨に特異的に強く発現していることがわかった。最近神経の発生にmafBが重要であるとの報告がされたが、maf-1,maf-2が軟骨の分化や神経の発生、分化に関与していることが明らかとなりこれらの遺伝子産物の標的遺伝子の探索を進めている。
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