研究概要 |
種々の癌遺伝子(v-src、v-fps、 v-yes、 c-Ha-ras, 活性化raf等)でトランスフォームした細胞では、内在性AP-1の活性化がおこっており、これがトランスフォーメーションに必須であることを平成6年度までに示してきた。本研究では、このAP-1活性化に伴い検出されるFra-2タンパク質の発現量の増大とFra-2の高度リン酸化に注目し、これを担う分子機構の解明を行った。fra-2プロモーターの解析から、v-srcによりトランスフォームした細胞内で見られるfra-2の発現量の増大は、プロモーター中にある2つのAP-1結合配列と1つのCRE様配列を介しておこること、またF9細胞系とexpression vector系をもちいた解析から非リン酸化型Fra-2/c-Junのダイマーは転写活性化能が低いことが判明した。これらの結果を統合し「Fra-2はリン酸化を受け、転写の負の制御因子から正の制御因子へと変換され自己制御により、その発現量を増大する。」との作業仮説をたて、それの検証をすすめている。これまでに、Fra-2キナーゼにはMAPキナーゼが含まれていることが判明した。また個体レベルでのAP-1機能の解析の為にニワトリ初期胚の任意の時期に任意の限局された領域に外来遺伝子をレトロウィルスベクターにより異所発現させる系を開発した。そして肢芽の発生過程での軟骨分化にv-fosが阻害的に働らいて長骨が短縮していることがわかった。このような長骨では増殖軟骨細胞の、成熟・肥大化軟骨細胞への移行が著しく低下して石灰化が、阻害されていることが判明した。このような著しい長骨の短縮は、c-fosではおきていないので、今後v-fosとc-fosの機能上の差異について研究を進めたい。
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