成人T細胞白血病(ATL)では、第14番染色体q11領域と第14番染色体q32領域が染色体異常の好発領域として知られている。第14番染色体q32.1に存在するTCL1遺伝子座は、ヒトT細胞性リンパ腫、あるいは白血病において、第14番染色体q11領域に存在するT細胞受容体遺伝子座との間の染色体転座に関与する。第14番染色体q32.1領域では約350kbにおよぶ広範な領域で染色体転座が発生する。われわれは、この領域からリンパ系の細胞で特異的に発現し、染色体転座t(14;14)(q11;q32)あるいは染色体逆位inv(14)(q11;q32)を持つ白血病細胞において高い発現を示す遺伝子を同定し、TCL1遺伝子と命名した。この遺伝子に対応するcDNAを単離し、その塩基配列を解析した結果、342塩基長のオープンリーディングフレームを有し、14kDaの蛋白質をコードする新規遺伝子であることが明らかとなった。この遺伝子は、この領域に染色体転座を持つT細胞白血病で高い発現を示すことから、この領域に同様の染色体異常を高発するATLにおける発現様式に興味が持たれた。
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