研究概要 |
1.Rasがん遺伝子産物(Ras蛋白質)とその哺乳動物におけるエフェクターであるRaf-1蛋白質との間の新しい結合様式を発見した。この結合は、従来知られていたRasのエフェクタードメインとRaf-1のRas結合ドメインとの結合とは異なり、Rasの活性化ドメインとRaf-1のCys-rich領域の間で起こり、RasC末端の翻訳後脂質修飾依存症であり,しかもRaf-1の活性化に必須であった。また、RasによるB-Rafの活性化が細胞膜成分非存在下で起こるが、それでもRasの翻訳後修飾(ファルネシル化)が必要なことを、自ら開発した脳細胞由来無細胞試験管内系を用いて証明した。これらの結果をもとに、RasによるRafの活性化機構、とくにRasの翻訳後脂質修飾の役割、に関して新しいモデルを提唱した。 2.Ras蛋白質の複数のエフェクター、Raf,Ral-GDS,出芽酵母アデニル酸シクラーゼ,分裂酵母Byr2の間でRas蛋白質上の結合認識配列が異なる事を、エフェクター領域付近にアミノ酸置換変異をもつ約50種類のヒトH-Ras変異体との結合解析により証明することに成功した。その結果、各エフェクターを識別して結合するRas変異体が得られ、それを用いて細胞のトランスフォーメーションにおける各種エフェクターの機能を識別して解析する試みを行った。 3.線虫において発見したRasエフェクター候補蛋白質Achについて、F-アクチンとの結合、アクチン団端キャッピング活性等を持つことを生化学的に証明した。さらに、Achが細胞分裂期特異的に中心体に局在する事を発見し、この蛋白質の機能が細胞(質)分裂の制御であることを予測した。この遺伝子をトランスポゾン挿入により破壊した線虫変異体を得、機能を解析中である。
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