研究概要 |
1,線虫C.elegansにおいて新規Rasエフェクター候補蛋白質PLC210を発見し、それがRas蛋白質とGTP依存症に結合する新種のフォスファチジルイノシトール特異的フォスフォリパーゼCである事を証明した。PLC210の哺乳動物におけるホモログの染色体遺伝子を破壊した線虫変異体を得て表現型を観察し、個体レベルでの各エフェクター分子の機能を解析した。 2,出芽酵母アデニル酸シクラーゼ結合蛋白質CAPのアミノ末端領域が、Rasに付加されたファルネシル基の受容体であることを遺伝学的、生化学的に証明し、結合認識の分子機構を予測した。エフェクター活性化において、Rasの翻訳後修飾(特にファルネシル化)が必須である分子機構が初めて解明された。 3,我々が発見したRasとRaf蛋白質間の新しい相互作用機構に基づき、がん抑制遺伝子産物Rap1A(Krev-1)のRaf-1およびB-Rafに対する相反する作用の分子機構を解明した。さらに、その作用のプロテインキナーゼAによる燐酸化による調節機構を見い出した。 4,種々の1アミノ酸置換を有するRasエフェクター領域に対応する合成ペプチドを用いて、Rasとエフェクターとの結合反応に関して、特定のエフェクターとの結合の選択的阻害が可能である事を示した。この結果は、比較的低分子量の化学物質を用いて、エフェクター特異的な阻害が可能であることそ示し、Rasの機能全般を阻害するものに比べて毒性の低い新しいタイプの抗癌剤の開発に結び付く可能性が考えられた。
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