研究概要 |
1.ジメチルヒドラジン(DMH)による化学発がんに対し、ベニバナ油あるいは高オレイン酸ベニバナ油を与えて大腸がん発がん及び組織内脂肪酸組成を検討した。 2.6週齢のICR雌マウスを各25匹ずつ4群に分け、それぞれベニバナ油高脂肪(HS:配合飼料中脂肪含量23.5%)、低脂肪(LS:同5%)を与えた。DMH(20mg/kg)は週一回腹腔内注射を12回行った。注射開始30週後に解剖し、発生した腫瘍のすべてについて組織学的検査を行った。また、肝及び大腸組織のリン脂質について脂肪酸組成をGC-MSで測定した。 3.HSで25匹中15匹に大腸腺がんを確認したのに対し、HO群では25匹中3匹と有意に腺がん発生率を抑制した。また、5%脂肪食群間では有為な差は認められなかった。 4.大腸がんに対する脂肪酸作用機構を検索するため、各食群間におけるリン脂質脂肪酸組成を分析した。肝臓のリン脂質組成では、HS,LSに比し、HO,LOでオレイン酸が有意に高く、リノール酸はHS,LSがHO,LOに比し有意に高かった。大腸ではリノール酸組成がHSにおいて特に他の3群より高かった。各リン脂質分画における脂肪酸組成では、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノルアミン、ホスファチジルイノシトール及びホスファチジルセリンの脂肪酸組成が食餌脂肪酸を反映していたが、スフィンゴミエリン(SM)ではネルボン酸(24:1、n-9)がHSにおいて他の3群に比し有意に低下していた。 5.以上の結果から、大腸の発ガンプロモーション過程でリノール酸が促進的に効いており、オレイン酸はその促進効果を抑制していると考えられる。またアラキドン酸に食ゼA_2群間で有意差が認められなかったことから、プロスタグランジンの発がん関与の可能性は少ない。SM中ネルボン酸のHSにおける低下と発がんの関係は今のところ不明であるが、SM誘導体が細胞内情報伝達に関係すると言われており興味がもたれる。
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