研究概要 |
本課題の研究期間は1年間であり多くを望めないので、目的を、市販牛乳がDMBA乳癌発生を促進するか、促進作用は牛乳蛋白質によるか、の2点に絞った。 1.牛乳の促進作用:対照群には蒸留水を、実験群には市販牛乳を自由に与え、飼料は市販固形飼料を自由摂取させ、発癌全過程への影響を比較した。対照群の固形飼料からのエネルギー摂取量は64.1kcal/日に対して、実験群の固形飼料と牛乳からの摂取量は63.8kcal/日と差がなく、乳腺腫瘍発生率(%)、乳癌発生数は対照群23/40(57.5),1.38;実験群34/40(85.0),3.55と有意に多発した。この結果から、予備試験で観察した牛乳の乳癌発生促進作用が確認され、その促進作用が高エネルギー摂取量によるものではないことが、明らかになった。 2.蛋白質の影響:乳汁中には耐酸性、耐熱性のペプチド成長因子が存在することが知られているので、牛乳による促進は牛乳蛋白質の作用であるという仮説に従い、合成飼料を用いて、カゼインと乳清蛋白質(ホエイ)・大豆蛋白質・卵白蛋白質の影響を比較した。その結果、ホエイはBounousら(1991)の結果と異なり促進作用があり、大豆蛋白質はinitiation,promotionいずれも促進しなかったが、カゼインはpromotionは促進したが、initiationに対しては抑制的に作用した。卵白蛋白質のpromotion実験では、促進も抑制もなかったが、カゼイン群の摂食量が有意に低く、促進が全くなかった。以上のようにカゼインの影響が実験により大きく異なり、精製過程での変性によるのか、混在する他の成分の影響によるのか、結論を出すことは現研究体制では不可能と考えざるを得ない。従って、今後は乳癌発生に関して安全な牛乳摂取方法として、ヨ-グルトの影響を検討したい。
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