研究概要 |
一般地域住民8,553人を対象としたコホート研究を1986年から行っており、現在までの8年間にわたり、全死亡とがん罹患の追跡調査を継続している。この研究の特色は、対象者の40%について末梢血による一連の血清・免疫学的指標を測定し、またDNAバンクを作成して、分子生物学的手法を導入した患者対照研究を行っていることである。本年度の研究成果は以下の通りである。 1.一般地域住民を対象としたコホート研究により、緑茶の成人病予防効果が示唆された。 a)緑茶の摂取量別にがん死亡率を検討した結果、緑茶の高摂取群の全がん死亡率は80才以下の年齢階級で他の群より顕著に低くかった。また、平均がん死亡年齢も緑茶の高摂取群では他群より高く、緑茶の飲用にはがん死亡も遅らせる効果があることを示した。 b)緑茶の摂取量別に血清成分を比較したところ、高摂取群では総コレステロール、中性脂肪、動脈硬化指数といった循環器疾患の危険因子が低く、心疾患の有病率も低かった。また、肝臓からの逸脱酵素やフェリチンも低く、緑茶に心・肝疾患への予防効果が示唆された。 2.コホートDNAを対照とした患者対照研究によって、肺腺がんにおける喫煙およびチトクロームP4501A1の遺伝子多型の関与を分化度別に明らかにした。すなわち、喫煙が原因となる低分化型腺がんでは、肺偏平上皮がんと同じCYP1A1遺伝子型が高危険群として同定された。
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