本研究では、赤血球系転写因子であるNF‐E2 p45の機能が、Maf関連蛋白質との会合によりどのように調節されるのか、並びに、赤血球分化におけるMaf関連蛋白質とp45の機能とその作用機作を明らかにすることを目的とした。本年度は以下の成果をあげた。 1.小Maf群蛋白質のうち、MafKをコードするマウスcDNAを単離した。すでに報告されているニワトリMafKとのアミノ酸配列の比較から、機能上重要と考えられる領域が明らかになった。 2.mafK遺伝子の発現様式の詳細な解析を、正常骨髄細胞とマウス胚を材料に用いて行った。その結果、mafK遺伝子は血球細胞の分化に加え、間葉系細胞と神経細胞の分化にも深く関与することが推察された。 3.MafKとp45のcDNAを培養細胞内で発現させ、転写因子としての機能を解析した。その結果、MafKは単独では転写抑制因子として機能すること、そしてp45それ自体のDNA結合活性は非常に低いことが明らかになった。一方、MafKとp45とのヘテロ二重体(NF‐E2)は強くDNAに結合し、転写を活性化することも明らかになった。さらに、NF‐E2による転写活性化に必須の領域を、p45分子上に同定した。 4.マウス赤白血病細胞株を用いて、mafK遺伝子を亜鉛依存性に過剰発現する細胞株を樹立した。この細胞の解析から、MafKは赤血球の分化を促進することが明らかになった。また、MafKとヘテロ二重体を形成する未知の蛋白質の存在が明らかになった。
|