研究概要 |
HOX11は染色体転座t(10;14)(q24;q11)を有するT細胞急性白血病の染色体切断部位よりクローニングされたホメオボックス遺伝子である(Science,1991)。HOX11によるT細胞腫瘍化の機序を調べるために、正常の胸腺細胞及び末梢T細胞、その他の造血系細胞の分化増殖におけるHOX11の発現を定量的RT-PCR法を用いて検討した。その結果、HOX11は胎生期の脾臓原基でオルターナテイブスプライシングによる2種類の違った長さのmRNAの発現が検出できた。しかし、胸腺細胞および脾細胞ではその発現は見られなかった。さらに、それらの細胞をフォルボールエステルやカルシウムイオノフォアなどで刺激してもHOX11の発現は検出できなかった。このことよりT細胞においてHOX11が異所性に発現することが細胞の腫瘍化に重要な役割を担っていると考えられた。これらの結果及びホメオボックス蛋白質が核内転写因子であるという事実より、HOX11が他の細胞周期調節分子あるいはアポプトーシスを調節する分子に作用して正常の細胞周期調節機構の破綻をきたし細胞を癌化に導くと考えられた。
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