研究概要 |
Srcファミリーチロシンキナーゼの活性抑制因子として本研究室で見い出されたCskチロシンキナーゼの生理機能を、Csk欠損細胞、分化モデル細胞、トランスジェニックマウスなどを用いて検討し、また一方で、Cskを道具として用いてSrcファミリーチロシンキナーゼの本来の存在意義の解析を行ない、以下の諸点を明らかにした。1)Csk欠損細胞を用いた解析より、細胞外基質との接着に依存したSrc標的蛋白質(パキシリンやp130casなど)のリン酸化の制御にCskが必須の役割を担うことを明らかにした。2)神経分化モデルPC12細胞を用いて、Src標的の一つパキシリンがCskと相互作用し、分化促進因子(NGF)などのシグナル伝達系で機能することを見い出した。3)中枢神経分化モデルP19細胞を用いた解析からは、Cskのgain-of-functionに伴うSrcの不活化によって、神経細胞の繊維の束化(fasciculation)の抑制、細胞接着分子L1の発現抑制、L1のcross-linkによるSrcの活性化が観察され、細胞間相互作用による遺伝子発現調節のシグナリングにおけるSrc,Cskの意義が示唆された。4)Cskの機能をアンタゴナイズするチロシンホスファターゼの分離精製を試み、また、繊維芽細胞を用いた解析から、SH2ドメインを持つSH-PTP2にその機能があることを見い出した。
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