研究概要 |
アクチビンとアクチビン結合タンパク質(ホリスタチン)がマウス胚性腫瘍(EC)細胞P19の分化を制御する機構を知るためにECP19細胞でのアクチビンの情報伝達機構を分子レベルで明らかにすることを目的としている。本年度の成果は次のようにまとめることができる。 (1)ECP19細胞にはタイプI受容体の2種類(ALK2,ALK4)及びタイプII受容体の3種類(IIA,IIB2,IIB4)が発現していることがわかった。これら各種受容体サブタイプの発現パターンがECP19細胞のレチノイン酸処理による神経細胞への分化誘導過程においてどのように変動するかをノーザンブロット解析により追跡した。タイプIIA受容体の発現量は、RA処理72時間後から急速に上昇した。これは神経突起の伸長しはじめる時期と一致しており、タイプIIA受容体を介する情報の伝達がECP19細胞の神経細胞への分化と深く関わっている可能性がある。 (2)COS細胞に発現させたアクチビンタイプII受容体は細胞膜上でホモダイマーを形成して、アクチビンと結合し得ることがアフィニティーラベリング法により証明された。このことは精製したタイプII受容体タンパクを用いたブロッティング法によっても確認された。さらに、この受容体のホモダイマー形成にはアクチビチンの存在することが必要であった。こうしたアクチビンのタイプII受容体ホモダイマーへの結合はホリスタチンによって完全に抑制されることが判明した。今回の結果から、タイプIとタイプIIの受容体のヘテロダイマーに加えて、タイプII受容体ホモダイマーを介してもアクチビンの情報が伝達されていることが予想された。また、こうした情報伝達が細胞表層においてホリスタチンにより調節されている可能性も示唆された。
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