研究課題/領域番号 |
06281259
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
佐方 功幸 久留米大学, 分子生命科学研究所, 教授 (80142024)
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研究分担者 |
古野 伸明 九州大学, 理学部, 助手 (80219120)
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キーワード | c-mosがん遺伝子 / ツメガエル卵 / 卵成熟 / DNA複製 / 単為発生 / 細胞がん化 / MAPキナーゼカスケード |
研究概要 |
1.卵減数分裂におけるMosの機能とシグナル伝達 卵成熟(減数分裂)においては、第1(M1)および第2(MII)減数分裂の間にDNA合成はない。本研究では、ツメガエル卵成熟におけるDNA合成の欠如(あるいは抑制)へのMosの関与を調べた。c-mos mRNAのアンチセンスDNAあるいは抗Mos抗体を卵核胞崩壊(GVBD)時の卵に注入すると、MI後に核膜が形成され、DNAが合成された。すなわち、MI/MII転移におけるDNA合成の抑制にMosが関与していることが判明した。生物学的には、MI後の核膜形成やDNA合成は成熟卵の単為発生的賦活化と見なせる。したがって、卵成熟におけるMosの機能の生物学的意義は「単為発生の抑制」にあると考えられた。同様な結論が、他のグループとの共同研究で、c-mos欠損マウスを用いても得られた。さらに、ツメガエル卵成熟の開始におけるMAPKカスケードの役割について調べた。優性不能型Mek1(MAPKキナーゼの一種)や MAPKの特異的ホスファターゼとされるCL100を用いてツメガエル卵のMAPKの活性化を完全に抑えても、卵成熟は(そのキネティクスは有意に遅れるもの)必ず起こることが明らかになった。このことから、卵成熟の誘起においては、Mosの下流経路としてMek/MAPKカスケード以外の何らかの経路も介在する可能性が示唆された。 2.Mosによる細胞がん化機構の解析 Mosは、Mek1を直接リン酸化することによってMAPKを活性化できる。MosによるNIH3T3細胞のがん化におけるMAPK経路の機能を解析するため、優性不能型Mek1を共発現させた。その結果、Mosによる細胞がん化が完全に抑制されることが明らかになった。さらに、野生型Mek1の過剰発現がMosのがん化能を顕著に活性化することも示された。これらのことから、Mosによる細胞のがん化にはMek1/MAPKカスケードの活性化が必要かつ十分であることが明らかになった。
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