Mosは、M期促進因子(MPF: cdc2とサイクリンBの複合体)の活性化や安定化を通して卵成熟の開始や停止に関与する一方、体細胞で発現させるとがんを引き起こす。そして最近、Mosの下流にMAPキナーゼ経路の関与が示唆されている。本研究では、Mosによる卵成熟やプロゲステロンによる生理的な卵成熟過程でのMAPキナーゼ経路の必要十分性、およびMos/MAPキナーゼ経路によるMPFの活性化機構を明らかにすると共に、MosによるNIH3T3細胞のがん化におけるMAPキナーゼ経路の関与、およびこの経路の下流因子を探ることを目的とし、次の様なことを明らかにした。 1.Mosによるツメガエル卵成熟のためにMAPキナーゼ経路が必要にして十分であることを明らかにした。 2.プロゲステロンによる生理的な卵成熟では、一定以上の閾値のMosによってはじめてMAPキナーゼ経路が活性化することが判明した。 3.Mos/MAPキナーゼ経路が、MPFの負の調節因子を阻害することでMPFを活性化することが示唆された。 4.MOSによるNIH3T3細胞のがん化にMAPキナーゼ経路が必要にして十分であることが判明した。 5.NIH3T3細胞において、Mos/MAPキナーゼ経路はc-Fosをリン酸化・安定化させることで細胞がん化を引き起こすことが強く示唆された。
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