新規天然抗がん物質の探索

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06282105
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 瀬戸 治男 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (10013335)
• 研究分担者: 長田 裕之 理化学研究所, 主任研究員 (80160836) ; 小林 昭雄 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (30115844) ; 永井 和夫 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (00011974) ; 池上 晋 広島大学, 生物生産学部, 教授 (80011980) ; 岩崎 成夫 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (00013326)
• キーワード: 抗癌物質 / anguinomycin / arenastatin A / albuside A / 紅花 / UK-1 / acetophthalidin / tryprostatin

研究概要

本年度の各班員の成果は以下個別に列挙するとおりである。
1.アデノウイルス癌遺伝子を導入して癌化させた細胞に、特異的にアポトーシスを起こす物質としてanguinomycin類を単離した。この化合物は、癌細胞の細胞死を誘起したが、正常細胞に対してはその増殖を停止させただけで毒性は示さなかった。
2.スポンジ(Dysidea arenaria)より、チューブリンに重合阻害活性を示す細胞分裂阻害剤arenastatin Aを単離し、そのIC_<50>値を2.8μMと決定した。本化合物のチューブリンへの結合阻害活性はvinblastineと類似していた。
棘皮動物イトマキヒトデ胚の初期胞胚期での発生停止作用を示す物質のスクリーニングによって、放線菌Streptomyces albusからalbuside Aを得た。本物質は強いRNA合成阻害活性し、マウス乳癌細胞FM3Aの増殖を強く阻害した。
受精ウニ卵の卵割阻害活性を示す物質として陸生ラン藻の一種のメタノール抽出物中より新規物質UK-1を単離し、その構造を各種機器分析により構造を決定した。UK-1はウニ胚の第一卵割を阻害し、小型の紡錘体を誘導した。
5.B細胞幼若化促進活性を示す高分子性の物質を紅花から単離した。この化合物はB細胞幼若化促進活性およびIgM抗体産生促進の活性を示した。
6.細胞周期阻害剤として、海底土壌より分離したカビからトリプロスタチンA、B、およびアセトフタリジンを単離した。トリプロスタチンは、cdc2キナーゼの温度感受性変異株マウスtsFT210細胞の細胞周期をM期で停止させた。アセトフタリジンは12.5μg/mlでtsFT210細胞の細胞周期を完全にG2/M期に停止させたが、前駆体は100μg/mlでも何ら阻害活性を示さなかった。

研究成果

• [文献書誌] Y.Hayakawa,K.K.Sohda,H.Seto etal.: "Anguinomycins C and D,new antitumor antibiotics with selective cytotoxicity against transformed cells." J.Antibiotics. 48. 954-961 (1995)
• [文献書誌] Y.Hayakawa,K.Sohda and H.Seto: "Selective cytotocixity of mycophenolic acid against trasformed cells." J.Antibiotics. 48. 1182-1184 (1995)
• [文献書誌] T.Shimizu,K.Hamada,S.Ikegami,et al.: "Selective inhibition of gastrulation in the atarfish embeyo by albuside B,an inosine analogue." FEBS Lett.369. 221-224 (1995)
• [文献書誌] Y.Li,Y.Koiso,S.Iwasaki et al.: "Ustiloxins,new antimitotic cyclic peptides:interaction with porcine brain tubulin." Biochem.Pharmacol.49. 1367-1372 (1995)
• [文献書誌] C.-B.Cui,M.Ubukata,H.Osada etal.: "Acetopthalidin,a novel inhibitor of mammalian cell cycle,produced by a fungus isolated from a sea sediment." J.Antibiotics. 48. 1382-1384 (1995)
• [文献書誌] H.Kakeya,I.Takahashi,H.Osada et al.: "Epolactaene,a novel neuritogenic compound in human neuroblastoma cells,produced by a marine fungus." J.Antibiotics. 48. 733-735 (1995)