研究概要 |
申請者(淀井)らにより分離精製されたATL由来因子(ADF)は大腸菌チオレドキシン(TRX)のヒトホモであり、還元活性、ラジカル消去能、抗TNF作用を持ち、各種ウイルス感染細胞、腫瘍組織で高発現が見られる。本研究は腫瘍組織、ウイルス感染に伴うADFの発現機構および調節の解析を行い、以下のような結果を得た。1)約2.1KbのADFプロモーター上流域を用いてCATアッセイを行い、ビンクリスチン、アドリアシン、エトポシドによる誘導が見られた。mutantを用いた実験より、我々の提唱しているオキシストレス反応領域を介してこれらの抗癌剤により誘導されていると考えられた。(淀井)2)TRX systemはシスプラチン耐性細胞において機能が亢進しており,シスプラチン耐性への関与が示唆された.A2780細胞においてTRXは単独ではシスプラチン耐性をもたらさず,耐性にはTRXと共働する分子が必要であると考えられた。(富田)3)TRXを少量発現するEBV感染B細胞株1G8を用いて、抗TRX抗体による100%に達する増殖抑制、PKC阻害剤(スタウロスポリン、カルホスチン)による抑制がみられ、増殖機構へはPKCを介する経路が示唆された。また、TRXによりCaの細胞内外の動員が見られた。この際、TPAに比して強く遷延するPKCのtranslocationが見られ、DAG活性の2相性ピークも見られた。2相目のDAGはプロパノール抑制を受けるが、プロパノール処理では細胞の増殖は阻害されず、PC-PLDのシグナル伝達は細胞増殖には関与しないと考えられた。(若杉)4)マウス線維肉腫BMT-11c19より樹立したQR-32の免疫原性は好中球、マクロファージ、NK細胞由来の活性酸素により低下したが、これにはQR-32由来PGE2の関与が考えられた。局所免疫はMn-SOD,GSH-Pxなどのラジカルスカベンジャーで保たれるため、局所の免疫にTRXを含むラジカルスカベンジャーの関与が示唆された。(細川)
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