研究概要 |
ヒトAFPは1本の糖鎖を有するがその構造は産生組織により差異があり,レクチン親和電気泳動法で多くのアイソフォームに分画される.その分子構造を明らかにしてきたがこれら分画は糖転移酵素の差異に起因するとの結果であった.ヒトAFP産生トランスジェニックマウスを用い各種組織ならびに肝癌産生のAFPを分析した結果,アイソフォームに組織特異性がある事およびヒトと同様に癌化に伴いフコース残基を有する分画が特異的に増加する事を示した. AFPに免疫抑制能がある事が種々の実験系で報告されているが否定的見解も多い.上記トランスジェニック動物にBSAを抗原とした実験的関節炎の誘発を試みたが対照に比しその発症は明らかに低率であった.イ-スト菌に各種アミノ酸置換を入れたヒトおよびラットAFPを産生させそのエストロゲン結合能を検討した.ヒトAFP436-461にある7ケのアミノ酸をラットのそれに置換すると強いエストロゲン結合能を示した.また相当するラットAFPのアミノ酸をヒト型に置換するとエストロゲン結合能を失った.同様にエストロゲン結合能を示すマウスAFPのこの部の構造は異なっており、それぞれ進化の過程で結合能を獲得し,生物学的機能を担っているとの仮説を支持した.イ-スト菌にAFPの3ケのドメインを単独または組み合わせで発現させた.それを用いた分析よりAFPの銅イオン結合部はドメイン1にあるとの仮説に反して,いずれのドメインにも結合部位が存在した.またこれらを用いたエピトープマッピングにより7種のヒトAFPに対するモノクロナル抗体はすべてドメイン1に向けられていた.
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