研究課題/領域番号 |
06282217
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
杉山 雄一 東京大学, 薬学部, 教授 (80090471)
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研究分担者 |
山崎 雅代 東邦大学, 薬学部, 講師 (40240741)
加藤 将夫 東京大学, 薬学部, 助手 (30251440)
寺崎 哲也 東京大学, 薬学部, 助教授 (60155463)
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キーワード | 抗癌剤 / 化学療法 / 最大耐用量 / ファーマコキネティクス / 血中濃度下面積(AUC) / 骨髄毒性 |
研究概要 |
抗癌剤の殺細胞効果のキネティックスについてType-I型とType-II型に分類されることが明らかにされている。すなわち、Type-I型薬物では、(薬物濃度)×(接触時間)の積(すなわちAUC)に依存して抗癌効果が観察されるのに対して、Type-II型では、一定時間以上抗癌剤を接触させないと殺細胞効果が発現されないこと(時間依存性の作用)が明かになっている。今回、多くの抗癌剤の副作用が骨髄細胞や消化管細胞のように細胞分裂の活発な組織に生じることに着目し、副作用に関しても抗癌剤の分類が可能となるか否かについて検討を加える第一ステップとして、文献検索に基づいたretrospectiveな解析を行った。その結果、AUC依存性のType-I型ではヒトAUCとマウスAUCは1:1の良好な相関を示したのに対し、時間依存性のType-II型では、ヒトAUCとマウスAUCには顕著な相違が認められた。Type-I型について総薬物濃度に対するAUC(AUCt)および非結合型薬物濃度に対するAUC(AUCu)について各々ヒトAUCとマウスAUCを比較したところ、AUCuにおいて更に良好な相関が認められた。従って、毒性用量におけるヒトAUCとマウスAUCに基づくPharmacokinetically Guided Dose EscalationはType-I型については有用な方法であるが、Type-II型では信頼性に乏しいといわざるを得ない。また、蛋白結合の種差を考慮することにより、更に有用な方法となることが示された。このように、TypeII型化合物の最大耐用量の予測法、臨床における抗腫瘍効果の予測法、最適の投与計画の設定法については未だ経験論に留まっており、より科学的な根拠に基づく方法論の確立が望まれる。そこで、血中平均滞留時間(MRT),一次モーメント曲線下面積(AUMC)がその指標と成りえる可能性について文献情報を基に検討を加えたが、満足する結果を得ることができず、さらに良い指標について検索中である。 多くの抗癌剤のdose limiting toxicityである骨髄毒性の定量的な予測法の確立を目的として、in vitro評価系である Bone marrow progenitor cells proliferation法(BMPP法)を用いて、抗癌剤の骨髄細胞に対する殺細胞作用を解析し、上記抗癌剤の分類が骨髄細胞に対しても適用できるかを検討した。BMPP法においては、AUC依存性のType-I型であるMMCおよび時間依存性のType-II型であるNVBの両化合物において、同一のAUCであっても短い暴露時間では殺細胞効果の弱い、時間依存性が認められ、腫瘍細胞に対する作用に基づく分類と相違が認められた。この原因として、作用機序が大きく異なるMMCとNVBがBMPP法においては、類似した殺細胞様式、即ち時間依存性を示したことから、評価法に由来するものが考えられたので、さらに別の評価法を用いて解析を進めている。
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