研究概要 |
1.造腫瘍性ヒト唾液腺腺房細胞(HSG-AZA3)を、in vitroで22-oxa-1α,25-dihydroxyvitamin D_3[22-oxa-1α,25(OH)_2D_3](10^<-9>-10^<-11>M)と3mMβ-グリセロリン酸を含む増殖培養液で培養すると、骨芽細胞に分化誘導されることを明らかにした。すなわち、処理細胞において、骨芽細胞の特異的細胞マーカーであるアルカリフォスファターゼとI型コラーゲンの発現が、間接蛍光抗体法、Sigma kitを用いた染色法あるいはimmunoblottingにより検出された。また、von Kossa染色によりbone noduleの形成を認めた。さらに、処理細胞の足場依存性、足場非依存性増殖はともに有意に抑制された。なお、HSG-AZA3細胞の1α,25-dihydroxyvitamin D_3核内レセプターの発現は、このレセプターに対するマウス単クローン抗体を用いた間接蛍光抗体法により検出された。2.2x10^7個のHSG-AZA3細胞を6週齢Balb/cヌードマウスに移植した。形成された腫瘍に、10^<-9>M22-oxa-1α,25(OH)_2D_30.1mlを腫瘍内に連日30日間投与すると、腫瘍増殖は有意に抑制され、腫瘍内に骨組織の形成を認め、その周辺に存在する腫瘍細胞にヒトosteopontin(OPN)とヒトosteonectin(ON)mRNAの発現がin situ hybridizationにより検出された。この場合、ヒトOPNcDNA[336bpフラグメント(862-1197)]、ヒトONcDNA[526bpフラグメント(1446-1971)]をhybridizationプローブとして使用した。Digoxigenin-labeled single strand RNAプローブをDIG RNA Labeling Kit(Boehringrer)を用いて調製した。OPNとONmRNAとのhybridizationは50℃で16時間行い、シグナルはNucleic Acid Detection Kit(Boehringer)を用いて検出した。さらに、22-oxa-1α,25(OH)_2D_3により誘導された骨組織内および周囲に破骨細胞の特異的細胞マーカーである酒石酸耐性酸フォスファターゼ活性が検出された。以上の実験結果より、ヌードマウスで増殖しているHSG-AZA3細胞は22-oxa-1α,25(OH)_2D_3により骨芽細胞に分化誘導され骨を形成し、bone remodelingが生じて治癒することが示唆された。
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