ヒト胎児由来細胞に、各種エネルギーに加速された炭素、ネオンイオンを照射し、突然変異頻度、染色体異常頻度およびDNA損傷程度を調べた。その結果、LETが100-200keVの放射線が最も致死効果および突然変異誘発効果が高いことがわかった。このLET領域では、染色体およびDNA損傷の程度も大きい。しかし、照射された細胞集団からHGPRT遺伝子座突然変異細胞を分離し、HGPRT遺伝子座における変化を、HGPRT遺伝子の9つのエクソンに対するプライマーを用いた多重PCR法で解析すると、LETの違いによって変化のスペクトラムが大きく、生物効果が強く現われる100-200LET領域で誘導される変異体では、欠失の程度が大きくすべてのエクソン(54kb)を大きく超えるが、さらに高いLET領域で生ずる変異体は、無欠失型が大半を占めることがわかった。高LET領域では、大掛かりな遺伝子欠損は致死に結びつきためではないかと予想している。これらの結果は、高LET放射線の生物影響を理解するためには、細胞内マイクロドジメトリーの重要性を示唆している。
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