細胞周期を制御する新しい遺伝子の解析

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06283201
• 研究種目: 重点領域研究
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 岡山 博人 東京大学, 医学部(医), 教授 (40111950)
• キーワード: 細胞周期 / チェックポイント機構 / G1 / 分裂酵母 / 哺乳動物 / cdk4 / DNA障害 / DNAポリメラーゼα

研究概要

高等生物の細胞周期の制御機構を明らかにするために、哺乳動物の制御機構と同時にその解明のための雛形として分裂酵母の制御機構の研究も進めている。現在、未知の制御因子の発見・同定とこれまでに明らかにされている制御因子との位置関係の解明に力を注いでいる。
今年度、cds1と名付けた新しいG2期チェックポイント遺伝子とrep2と名付けた細胞周期の開始遺伝子の発見と同定に成功した。共に分裂酵母の遺伝である。分子遺伝学的解析の結果、cds1はセリン・スレオニン型タンパクリン酸化酵素をコードし、このタンパクリン酸化酵素はDNAポリメラーゼαと結合してDNA合成をモニターしその間、細胞分裂の開始を抑えるG2チェックポイント機構の中のセンサーであることが分かった。rep2は、zincフィンガー1個を持つタンパク質をコードする。 このタンパク質は、これまでに我々が発見したRes2タンパク質と結合してS期開始に必須な遺伝子の発現調節を司る転写因子であることが分かった。更に、Rep2タンパク質自身で転写活性化能を持ち、栄養源の有無によってその発現が左右されることから、細胞周期の開始調節に深く係わっている可能性が明らかになった。
動物細胞のほうでは、紫外線DNA障害に対するG1期チェックポイント停止の主たる機構を解明した。動物細胞の細胞周期の開始には、Cdk4キナーゼが必須である。 このキナーゼには、G1からS期に進行する際、チロジン残基のリン酸化と脱リン酸化が起こり、この脱リン酸化の阻害が紫外線障害によるG1期停止機構の本体であることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] Jinno,Shigeki: "Cdc25A is a novel phosphatase functioning early in the cell cycle." EMBO J.13. 1549-1556 (1994)
• [文献書誌] Murakami,Shigeki: "Highly sensitive detection of viral RNA genomes in blood specimens by an optimiged reverse transcription-polymerace chain reaction." J.Med.Virol.43. 175-181 (1994)
• [文献書誌] Manabe,Sadao: "Production of nonstructural proteins of hepatitis C virus reguires a putative viral protease encoded by NS3." Virol.196. 636-644 (1994)
• [文献書誌] Sugiyama,Akio: "A zinc finger protein controls the on set of premeiotic DNA synthesis of fission yeast in a Mei2-independent cascade." EMBO J.13. 1881-1887 (1994)
• [文献書誌] Miyamoto,Masaaki: "res2^+.a new member of cdc10^+/SW14 tamily,controls the “start" of mitotic and meietic cycles in tission yeast." EMBO J.13. 1873-1880 (1994)
• [文献書誌] Obara-Ishihara,Tomoko: "A B-type cyclin.regulates conjugation via interaction with cell cycle “start" genes in fission yease." EMBO J.13. 1863-1872 (1994)