研究課題/領域番号 |
06283205
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 光昭 東京大学, 医科学研究所, 教授 (80012607)
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研究分担者 |
松崎 洋一郎 東京大学, 医科学研究所, 教務職員 (70282522)
鈴木 健之 東京大学, 医科学研究所, 助手 (30262075)
平井 洋 東京大学, 医科学研究所, 助手 (10202277)
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キーワード | 細胞周期 / 細胞周期阻害因子 / 成人T細胞白血病 / 転写因子 / 遺伝子発現 / ウイルス発がん / HTLV-1 / 転写活性化 |
研究概要 |
HTLV-1は、成人T細胞白血病(ATL)および熱帯性痙性麻痺症(HAM)の原因ウイルスである。これらの病原性の分子機構を明らかにすることを目的として、HTLV-1の制御遺伝子Taxの機能を解析した。 昨年度までの研究で,Taxが細胞の転写因子に結合して転写因子の活性を亢進し、特異的な遺伝子の発現を活性化することを明らかにし、それらによる細胞の異常増殖の可能性を指摘してきた。加えて、Taxはがん抑制遺伝子であるp16,p15に結合し、そのCDK4キナーゼ抑制活性を阻害して、Rb蛋白の燐酸化を促進し、最終的に細胞周期を促進して細胞の異常増殖をもたらすことを示した。これら細胞周期抑制因子ファミリーの内、p18についてはその発現を抑制することを見出していた。 本年度は、このp18遺伝子の発現抑制の分子機構を解析した。その結果、p18のプロモーターに存在するE-Boxを介して、Taxが転写抑制を起こすことを明にした。さらに、Taxの変異体を用いた解析では、NF-κBの活性化がE-Boxを介した転写抑制に関与する可能性が示唆された。また、Taxが直接あるいは間接的にE-Box似結合する証拠は得られなかった。これらのことから、Taxは、転写活性化の場合とは異なり、間接的にE-Box結合因子を介して転写を抑制すること、その転写抑制はNF-κBの活性化の下流にある可能性が示された。この結果は、Taxの転写の活性化、細胞周期抑制因子の不活性化に加えて、転写抑制機能も直接細胞の異常増殖の誘導にかかわることが明らかとなった。
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