研究課題/領域番号 |
06283206
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
平井 久丸 東京大学, 医学部・附属病院, 助教授 (90181130)
|
研究分担者 |
今井 陽一 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
高橋 宗春 東京大学, 医学部・附属病院, 助手
|
キーワード | 白血病 / Evi-1 / 核内蛋白質 / zinc finger / MAP kinase / JNK / ストレス刺激 / アポトーシス |
研究概要 |
Evi-1は2つのcluster(第1 zinc finger領域、第2 zinc finger領域)に分かれた10個のzinc finger構造を持つ核内蛋白質をコードし、ヒトでは染色体の3q26上に存在する。Evi-1は正常骨髄細胞ではほとんど発現が認められないが、ヒトの白血病において高発現をすることが知られている。これらのことから、Evi-1は造血細胞の悪性化に深く関与する遺伝子であり、その機能を明らかにすることは造血細胞の悪性化の機構を解明する上で重要である。本研究ではヒトの白血病発症に深く関わるEvi-1遺伝子産物の機能についてさらに解析を進め、以下のことを明らかとした。Evi-1はTGFβの細胞内シグナル伝達分子の一つであるSmad3と核内で結合してTGFβシグナルを阻害するが、この機序には、転写抑制因子であるCtBPがヒストン脱アセチル化酵素(HDAC1)をリクルートしてEvi-1に会合する機構が関与することが明らかとなった。また、Evi-1は、種々のストレスシグナルによるJNKの活性化を特異的に抑制することを明らかにした。Evi-1はJNKと結合し、この結合がEvi-1によるJNKの抑制に必須であった。Evi-1は、JNKによるFasLの発現誘導や細胞のアポトーシスの誘導を抑制した。これらの結果から、Evi-1はJNKと結合し、その機能を不活化することによってアポトーシスを抑制し、細胞の悪性化に関わることが明らかになった。このようにEvi-1は種々のメカニズムを通して細胞の増殖制御を破綻させ、造血細胞を悪性化に導くと考えられる。
|