1)WIlms腫瘍のがん抑制遺伝子WT1の産物は、G1期に作用して細胞周期のS期への信号を抑制するはたらきをもつことを見いだした。WT1蛋白質を過剰発現している細胞ではcyclin/CDKの発現レベルはあまり変化しないが活性が低下していることや、cyclin/CDKを同時に過剰発現するとWT1による細胞周期の進行阻害がみられなくなることから、WT1蛋白質による細胞周期の制御機構にはcyclin/CDKの活性制御が重要であると考えられた。2)WT1は血球系細胞やEC細胞の分化に関与していると考えられた。3)WT1は急性白血病で異常発現しており予後と相関があること、WT1の定量が残存白血病(MRD)の検出に有用であることが示された。4)WT1のターゲット遺伝子およびWT1結合蛋白質の候補を単離し解析を進めた。5)大腸がんのがん抑制遺伝子APCの産物がG1期に作用して細胞周期のS期への進行を阻害する活性をもつことを見いだした。APC蛋白質の作用経路にもcyclin/CDKが関与している可能性が示唆された。6)免疫電顕によりAPC蛋白質が腸管上皮の細胞接着面のみならず、カテニンの存在しないmicrovilliにも局在することを明らかにした。7)そこでカテニン以外のAPC結合蛋白質の候補遺伝子を単離し解析を進めた。
|