研究課題
基盤研究(A)
この研究は、東京およびその周辺地域における社会的実態調査を通じて、それぞれの地域の変動とその過程で生じている地域問題ならびに、それに対応して展開している住民や地域諸団体ならびに地方自治体をはじめとする地域の諸機関などによる地域形成の営み、ことに地方自治体の地域政策を把握し、今日の転換期における地域変動と地域形成について明らかにしようとするものである。本報告は2部から構成されており、その第1部では、東京都の内から集中的な調査地点とした千代田・世田谷・大田の3区の住民を対象とした市民生活に関するアンケート調査、東京都大田区の中小企業の経営と地域社会との関連についてのアンケート調査の結果を分析した。前者においては、都心区の住民の多くが居住継続の希望をもちながらも、一方では経済変動によって自営業者などが事業継続が困難になって流出し、その結果として商店などの日常生活の便宜の不足が生じ、さらに地価や住宅・土地問題等によって居住が困難になっていること、これに対する行政施策が必ずしも適合的でないことを示している。後者においては、中小企業経営者の企業間ネットワークと彼らの構成する地域団体との関連が分析され、また彼らがこの地域での経営と居住の継続を希望し、住工混交地域としてのまちづくりを希望していることなどが示された。また、第2部においては、わが国の地域開発の展開と地方自治体における地域計画の策定のあり方について、これまでの地域社会学の研究成果を整理し、地域社会計画の社会学的研究として、報告にとりまとめた。ここでは、地方自治体における地域社会計画が、産業化発を中心とする計画から、次第に生活環境の整備を中心とする広範な内容をもつものに移行してきていることをあとづけ、その意義と問題点を検討した。