人類学からみたベトナム社会の基礎的研究-社会構造と社会変動の理論的検討

1995 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 06301041
• 研究種目: 総合研究(A)
• 配分区分: 補助金
• 研究分野: 文化人類学(含民族学・民俗学)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 末成 道男 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (20054570)
• 研究分担者: 嶋 陸奥彦 広島大学, 総合文科学部, 教授 (30115406) ; 瀬川 昌久 東北大学, 国際文化研究科, 助教授 (00187832) ; 横山 廣子 国立民族学博物館, 第二研究部, 助教授 (30143324) ; 田村 克巳 国立民族学博物館, 第二研究部, 教授 (40094156) ; 武内 房司 学習院大学, 文学部, 助教授 (30179618) ; ITAGAKI Akemi Yokohma City University, Faculty of Human Scinces, Lecturer (10221764) ; KIKUCHI Hideaki Chubu University, Faculty of International Relations, Lecturer (20257588)
• 研究期間 (年度): 1994 – 1995
• キーワード: ベトナム / 東アジア / 東南アジア / 比較 / 人類学と歴史学 / 社会構造 / 社会変動 / 少数民族

研究概要

本研究の目的は、ベトナム村について、東アジア諸社会、ことに中国南部および漢文明周辺諸地域としての韓国との比較を中心としながら、その特色を明らかにすることにある。人類学的な現地調査の蓄積が、きわめて少ない現状において、国内で利用できる文献を十分活用し、また歴史学をはじめとする他分野との学際的協力のもとに、新しい視点から社会構造および文化に関する概念や理論創造のための基盤整備を行うことが急務である。ドイモイ政策の定着と国際情勢の緩和に伴い急速な変貌を遂げようとしているベトナムは、社会の動態的に把握するモデルとしても絶好の対象である。研究会における学際的な報告と討論は、このような観点をふまえ、相互に啓発裨益するところが多かった。具体的な成果としては、1.ベトナム社会、文化についての、これまでの研究の概観と展望の整理、2.東アジアの中でも特異性を示すベトナム村落について、従来の研究の整理と共に、年齢原理の重要性および周辺社会のそれとの比較の有効性が示されたこと、3.相続制度についても、最近の歴史的資料を援用することにより、近代までの女性の法的地位が現状から想像される以上にた高かったこと、4.研究対象として従来ほとんど省みられなかった伝統医療についても、ベトナム独自の南薬が中国系の北薬や西洋医学と共存し、その集積性が注目され、5.民間信仰において、従来の儒道仏の習合といった静態的捉え方に対し、個々の事例に即して動的側面を柔軟に把握することの重要性が議論された。6.少数民族に関しては、現状について依拠しうる資料が少なく、もっぱら文献研究に依らざるをえなかったが、民族間関係やエスニシティに関し興味有る議論が交わされた。全体を通して、比較の視点が重んじられ、中国、タイなどの周辺諸地域あるいは韓国日本のように離れていても著しい類似性が見い出されることを参加者全体が認識したことは、これからの研究に大きな刺激をあたえるであろう。

研究成果

• [文献書誌] 末成道男: "ベトナムの家譜" 東洋文化研究所紀要(東京大学). 127. 1-42 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 瀬川昌久: "The Ethnic Identity of the She and the Cultural Influence of the Hakka." Perspectives on Chinese Society(Eds.M.Suenarietal). 191-203 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 嶋尾稔: "ベトナム阮朝期挙人の出身地について(下)" 慶應義塾大学言語文化研究所紀要. 27. 189-201 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 武内房司: "歴史のなかの苗族-少数民族の移住と抵抗" へるめす. 54. 85-95 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 片山剛: "清末民国期、珠江デルタ順徳県の集落と「村」の領域" 東洋文化. 76. 163-199 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 嶋陸奥彦: "朝鮮時代後期の村落構成の動態-大丘戸籍の分析" 東洋文化. 76. 201-226 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Suenari,Michio(eds.): "Perspectives on Chinese Society : Views from Japan" Univ.of Kent Press,Centre for Social Anthropology Computing, 373 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 末成道男(編): "東洋文化76号(特集:東アジアにおける人類学と歴史研究)" 東京大学東洋文化研究所, 226 (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] SUENARI,Michio: "Genealogy in Vietnam." Toyobunka (Oriental Culture) (in Japanese). 127. 1-42 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] SEGAWA,Masahisa: "The Ethnic Identity of the She and the Cultural Influence of the Hakka" Perspectives on Chinese Society (Eds.M.Suenari et al). 191-203 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] SHIMAO,Minoru: "Regional Differences in Academic Success during Nguyen Period." Reports of the Keio Institute of Cultural and Linguistic Studies (in Japanese). 27. 189-201 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] TAKEUCHI,Fusaji: "The Miao in the History : the Migration and Resistance among the Minority Groups." Hermes. 54. 85-95 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] KATAYAMA,Tsuyoshi: "The Territories of Natural Villages and Administrative Villages in Shunde County in the Pearl River Delta during the Late Qing and Republican Periods." Toyobunka (Oriental Culture) (in Japanese). 127. 163-199 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] SHIMA,Mutsuhiko: "Mobility and Continuity of Rural Households in Late Choson Korea." Toyobunka (Oriental Culture) (in Japanese). 127. 201-226 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] SUENARI,Michio (eds.): Perspectives on Chinese Society : Views from Japan. University of Kent Press, Center for Social Anthropology Computing, 373 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] SUENARI,Michio (ed.): Toyobunka (Oriental Culture) (in Japanese), 127. 228 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より