研究課題
本年度は、前年度におこなった文献史料の収集と研究動向の整理の上に立って、実際の研究を推し進めるとともに、研究過程に生じた必要に応じて、さらに文献・史料の収集を行った。また、6回の全体会議を開いて、研究分担者の中間報告を行なうとともに、相互の問題意識を深めあった。田中穂積は、メソポタニアからバクトリアにいたる地域のヘレニズム事情を考察するなかで、アレクサンドロス大王のバビロン支配の実態と、そのもとでのギリシア人植民についての論文を発表した。森田鉄郎は鋭意研究を推し進めつつあったが、1996年2月死去した。植田俊郎は、フランス革命期の外国人問題を分析することによって、革命で形成されたフランス国民国家に民族・人種に関する矛盾そのものが内在することを明らかにしつつある。武本竹生は、昨年度の成果を踏まえて、第一帝政期のフランス国内におけるユダヤ人問題を取り上げ、その異民族同化政策の実態を分析した。田中きく代には、19世紀中頃の合衆国マサチューセッツ州における外国人貧民政策の実態を、とくにその慈善局の施策の分析を通して解明しつつある。根無喜一は、19世紀後半にイギリス陸軍情報部が次第に参謀本部設置に接近する過程を分析した。黒住宏は、ハプスブルク再評価論の再検討の立場から、19世紀半ばから第一次大戦にいたるハプスブルクにおける個別民族を地域レベルにおいて見直す作業を実行しつつある。石井規衛は、ソ連に固有の民族問題はすでに1922年の連邦制結成のさいに現われていたが、しかし、当時の統治エリートは強力な国家建設に気を奪われており、民族問題にあまり自覚が見られなかったと考えている。栗原優は、ユダヤ人絶滅政策の実行過程を分析して、総力戦経済下における食料問題と労働力問題がこれに重大な影響を与えていることを確認した。
すべて その他
すべて 文献書誌 (4件)