研究概要 |
1.すでに補助金交付の2年前からグループ研究を続けてきた研究成果をグループメンバー6人が平成6年度の第63回社会経済史学会全国大会(神戸大学,5月28日/29日)におけるパネルディスカッションで発表し,約300人の参加者と活発な討論を交わした。高橋と篠塚が問題提起と総司会を行い,石坂:「近代ヨーロッパ農村工業史研究の課題」,斉藤英里:「アイルランド麻織物工業の盛衰をめぐって」,馬場:「「プロト工業化」から「工業化」へ」,佐村:「フランス・ノール地方における農村工業と工業化」,の順で報告を行った。作道と谷本がコメンテーターとして,それぞれヨーロッパ経済史と日本経済史の立場から論点の整理を行った。 2.このパネルディスカッションを通じて,伝統的な国民経済の枠組みの中で工業化を研究してきた研究者の側から若干の批判と疑念が提出されたものの,工業化現象の地域的ないし超国境的性格の強調は大方の聴衆のポジティヴは反応を得た。国家の行政的境界が及ぼす影響力はもとよりこれを否定するものではないが,工業化がまずは特定地域の人的・物的枠組みの中で発生し,開花する特殊地域的な現象であること,またこの地域が政治上の国境を超えて,等質的な労働力,共通の資源,密な交通関係,共通の宗教等によって形成されることが改めて確認された。 3.このパネルの後引き続いて,平成6年11月5日,神戸大学において交付金認可以後最初の研究会が開かれ,高橋:「地域工業化をめぐる所仮説の比較検討」,重富:「工業化期イギリス農村の土地所有動向」,石坂:「工業地域と国境」の3報告を中心に充実した討論が進められた。 4.さらに,平成7年3月4-5日には,東京で第2回の「地域工業化」研究会が開かれる予定である。報告予定者は,斎藤修:「小農と市場と徳川経済の成立」,勘坂:「13世紀イングランドにおける市場経済化」であり,地域工業化開始直前の市場経済形成過程を日本とイギリスについて検討する。
|