研究分担者 |
植村 善博 佛教大学, 文学部, 助教授 (30257802)
喜多 朝子 神戸山手女子短期大学, 教授
松尾 容孝 鳥取大学, 農学部, 助教授 (20199764)
松田 隆典 滋賀大学, 教育学部, 助教授 (90199802)
秋山 元秀 滋賀大学, 教育学部, 教授 (00027559)
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研究概要 |
近畿・中国地方各地で,明治期に作製された地籍図について所在調査,実態調査を行い,その結果,以下の事実が明らかになるとともに,それらを利用した歴史地理学的研究としても多大の成果があった。詳細については報告書を刊行する予定である。 (1)明治初年の地籍図類は,地方によって様々な名称がつけられているが,基本的には地租改正にともなう行政上の必要から作成されたもので,その典拠となるのは明治6年に布告された太政官布告であるが,実際に地図類の作成は各地方でさまざまな微修正を加えられ,各府県がだした「地租改正ニツキ人民心得書」に基づいて行われた。今回の調査で,各地でこの「心得書」の実物が発見され,その様式と実際の地籍図との対比が行われ,地籍図作成の具体的なプロセスが明らかになった。 (2)明治初期においては,廃藩置県からはじまる複雑な行政区画制度の変遷があるが,地籍図の作成もこの変遷を反映しており,今日の同一府県内にさまざまな様式の地籍図が存在するのは,このような実態を反映しているものであることが明らかになった。同時にその背景には,明治以前の藩政下における土地行政,とくに絵図類の作成が存在することも明らかになった。 (3)この地籍図類を用いての歴史地理学的研究としては、おれまでに行われてきた歴史時代の景観復原に加え土地生産性や土地利用についても,地籍図が有効な資料であることが明らかになった。また、自然地理方面でも,古い時代の地震などによる微地形の変化が,地籍図においても明確に示されていることが,明らかにされた。
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