研究課題/領域番号 |
06302031
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平島 崇男 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (90181156)
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研究分担者 |
小畑 正明 熊本大学, 理学部, 教授 (20126486)
田切 美智雄 茨城大学, 理学部, 教授 (50007829)
北村 雅夫 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70004489)
鳥海 光弘 東京大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10013757)
広井 美邦 千葉大学, 理学部, 教授 (40019427)
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キーワード | 変成作用 / モデリング / p-t経路 / 岩石組織 / ミグマタイト / 超高圧変成岩 |
研究概要 |
この基盤研究は、岩石・鉱物・地球化学・流体力学などのデータをもとに、地殻深部を構成する岩石の形成過程やその運動過程を検討するためのモデルの構築を目指して展開した。研究グループは天然の岩石に記録されている物理現象を精密に"読みとり班"とモデリング班で構成した。 読みとり班は地殻物質が記録している温度・圧力・変形・時間履歴を解析し、次の様なことが分かった。 1)三波川変成帯では岩石が沈み込む経路に地域差があること、変成岩体の上昇方向は沈み込み帯に平行で、通説とは異なっていたことが判った。 2)阿武隈帯と領家帯では、高温部で部分溶融が広範に起こっていることが指摘され、SHRIMP年代測定法などで原岩年代の問題に進展を見た。この研究中に、高変成度部からセクト構造をもつざくろ石が多数見つかった。高変成度部地域におけるセクト構造ざくろ石の形成と岩石組織が片状から片麻状に変化する理由は部分溶融のためと提案された。領家帯の熱源が沈み込んだ海嶺だという通説は否定された。 3)超高圧変成作用の研究では、中国蘇魯地方で花崗岩が超高圧変成岩に変化した例、超高圧変成岩が地表に上昇する際に中圧型変成岩に変化した例が見つかった。その結果、蘇魯地方の中圧型正片麻岩の一部(あるいは大部分)は超高圧変成岩から変化したこと、超高圧変成岩体はマントルから地殻浅部へ急速に上昇した事などが明らかになった。 4)EPMAを用いた造岩鉱物の2次元元素分布解析により、表面平衡による結晶成長が主と考えられていた変成岩中の鉱物に非可逆的な結晶成長で形成された例が多数見つかった。また、鉱物内部の元素拡散が低温では無視できると考えられていたざくろ石でも主要元素の分布が内部拡散により改変された例が見つかり、安易なインバージョンによる温度圧力経路の推定に警告を与えた。 5)上記の研究から沈み込み帯深部のキネマチクスが明らかになり、各現象を定量的にモデル化する際の制約条件が求められた。これらの結果を踏まえて、モデリング班は多成分・多次元系の地質現象を定量的にモデル化するときの指針を提案した。
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