研究概要 |
昆虫の行動の定量的解析やその動きを作り出す外骨格の詳細な構造については観察・計測方法の進歩によって次第に明らかになってきた.一方,行動の発現やその制御機構に関する中枢神経系の単一神経レベルでの研究も活発に行われている. 本研究では,サンプルとして入手しやすく,かつ中枢神経系を構成する神経細胞数が少なく,個体間でその同定が可能な昆虫(蚕蛾)をモデルシステムとして用い,その行動発現の神経メカニズムを,学習を用いて,移動ロボットの制御システムの中に作り上げることに成功した. 神崎は,行動発現およびその制御の中枢神経機構の研究を神経生理学,組織学,さらに行動学的に総合的に行ってきた.とくに,昆虫が匂い源に定位する際に示す定型的(本能的)なジクザグ行動の発現,制御に関連する中枢神経系の機能的経路や情報処理機構の枠組みを明らかにした. 三浦,下山は,雄の蚕蛾の触角を5ミリほど切り取り,両端からワイヤを差し込んでおくと,雌のフェロモンに非常に鋭敏に反応して,電気信号が取り出せることを見い出し,このようなセンサを2個,車輪付の移動ロボットに取り付け,雌の蛾のフェロモンを追跡させることに成功した.この移動ロボットに,上記の神崎が得たジグザグ行動を遺伝的アルゴリズムなどを用いて習得させたのである.神経回路としてはリカレントネットワークを用いた.最小8個の細胞数でジグザグ運動が習得できたのである.
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